先輩の声
一由 久美子
たくみ外苑薬局 薬剤師
訪問服薬指導チーム責任者
在宅医療における薬剤師の役割とは?
――たくみ外苑薬局では、現在何名の患者さんを『在宅訪問』しているのですか?
当薬局では、現在5名の薬剤師がチームを組んで、渋谷区、新宿区、港区など、40名前後の患者さん宅を月に平均2回ずつ訪問しています。都会はやはり、日中独居や老老介護の患者さん宅も多く、在宅訪問の重要性をとても強く感じています。
――在宅訪問では、どのような業務を行っているのですか?
私たち薬剤師が担っている役割は大きく分けて二つあります。
一つは、訪問医師から受け取った処方箋をもとに調剤し、それを持って患者さん宅を訪問して服薬指導を行うことです。
『服薬指導』では、薬がきちんと飲めているか、飲み合わせの相互作用や市販の薬との併用などをチェックし、患者さん一人ひとりの状況に合わせて「お薬カレンダー」を作ったり、箱の中に日付ごとに分けてセットしたりなど、様々な工夫をして指導にあたっています。
もう一つは、患者さんのリアルな服薬状況を知ることです。
実際に家に上がらせていただき、生活の現場を見ることで、患者さんの生活リズム、身体の障害、理解度など、窓口だけではなかなかわからない深い部分にまで踏み込むことができます。その上で、薬の剤形の見直しや必要な薬の整理など、薬剤師の目から見た情報を医師にフィードバックし、様々な提案を行っています。現在では、往診先の医師から直接相談の電話が来るなど、頼られることが大きなやりがいになっています。
在宅医療はスペシャリストの協演の場。信頼関係の構築は不可欠
――医師との連携が重要なんですね?
在宅訪問では医師だけではなく、看護師やヘルパー、ケアマネージャーとの連携が不可欠です。そのため、月に一度のカンファレンスには私たち薬剤師も参加し、活発に意見を交換するなど信頼関係の構築に努めています。また、その時にはカルテも見せていただいて、患者さん一人ひとりの背景や疾患への理解も深めています。
――在宅医療は多くのプロフェッショナルが力を合わせることによって成り立っているんですね?
そうなんです。この間も、ある独居の患者さんから、「毎日、お医者さんや薬剤師さんなどいろんな方が訪問してくれるので、可能なかぎり住み慣れたこの家で過ごしたい。」という言葉をいただきました。これには、改めてチーム医療に携わる素晴らしさとやりがいを感じましたね。
在宅医療の現場で広がる薬剤師の役割。求められる幅広い知識
――在宅医療の充実により、調剤薬局の役割も大きく広がっていくことが予想されます。その点に付いて、たくみ外苑薬局で取り組んでいることはありますか?
最近は、当薬局でも在宅で緩和ケアや中心静脈栄養を行いたいと望む患者さんが増えてきました。
そのため、クリーンベンチの導入を決定し、患者さんの想いに可能な限り対応できる体制を整えています。でも、機材だけでは不十分です。それを使用し、患者さんと向き合う薬剤師の力量が伴わなくてはなりません。
だからこそ外苑企画商事並びに当薬局では、フィジカルアセスメントやプライマリ・ケアなど、様々な知識を身に付けられる学習会への参加を促進し、薬剤師の成長を支援しています。
さらに、在宅訪問を行う上では、薬剤師であっても救急時に対応できる知識は持っているべきだと思います。先日も、訪問先で患者さんの容体が急に悪くなり、救急車を呼んで搬送することがありました。今後もこういったことは起こり得ることであり、日々、薬剤師のレベルアップに取り組み、幅広く在宅医療のニーズに応えられる薬局を目指していきたいと思います。
若い方にも積極的に門戸を開き、薬剤師がもっと活躍出来るように
――それでは、現在薬剤師を目指されている方にメッセージをお願いします。
高齢化社会が進む現代では、在宅医療の重要性は今後もますます高まり、薬剤師の需要も大きくなっていきます。でも、全国的に見ればまだまだ薬剤師として在宅医療に携われる環境は多くありません。
だからこそ当社では、インターンシップや実務実習、そして新入職員研修などで、できる限り在宅医療をカリキュラムに取り入れ、興味のある方に体験していただけるよう門戸を開いています。
患者さんも、学生さんなど若い方が訪問されると嬉しいようでとても喜んでくれるんですよ。
医師や看護師、ヘルパー、ケアマネージャーなど、職種の垣根を越えて行われる在宅医療は、薬剤師として新たな活躍の場であり、とてもやりがいのある仕事です。あなたと共にチーム医療の一員として活躍できることを楽しみにしています!