HOME > 先輩の声 > 角南 直美(わかば薬局)

先輩の声

病院や薬局の垣根を越えてデリケートかつシビアな病気を支えるチーム体制

取り組み(2)

角南 直美
わかば薬局 薬剤師
HIV患者支援チーム

HIV患者の支援

難病患者のために、調剤薬局ができること

――「わかば薬局」がHIV患者さんの支援を行うようになった経緯から教えてください。

隣接する東葛病院がHIV患者さんを受け入れるようになった数年前、HIV患者さんを支援していくための体制づくりを医師、看護師、ソーシャルワーカーで進めていました。
その会議に門前薬局である当薬局もオブザーバーとして参加したことがきっかけで、地域の調剤薬局としてHIV患者さんへの支援に本格的に取り組むことになりました。

――支援の具体的な内容について教えてください。

当薬局ではHIVと診断されて初めて来局される患者さんに対して、個室面談と服薬指導を行っています。初めての方はやはり、とても不安を持って来られる方が多く、まずは何よりも安心してもらうことが大事です。
じっくり話すことにより信頼を得ることが支援の第一歩。その上で、薬の飲み忘れがシビアな病気であること、薬の重要性を説明し、理解を促しています。

――角南さんが担当になったのはなぜですか?

私は途中からの参加になるのですが、第一人者である前任の薬剤師の姿勢を見ていてとても感銘を受けたんですね。
その方は、今まで前例のなかったHIV患者さんへの支援のために、日々、勉強を重ねて薬剤師としてできることを懸命に探して いました。
HIV患者さんの対応件数が増えていくにつれ、次第に自分も力になりたいと思い、立候補しました。

患者さんに寄り添い、共に治療を進めていく

――HIV患者さんへの支援に薬剤師が関わることの意義は?

HIV治療の基本は、投薬です。HIV領域はまだ発展途上な部分があり、次々と新薬が開発されています。その種類は膨大で、患者さんお一人お一人のライフスタイルに合わせた薬を選ばなければなりません。
これは薬の専門家である薬剤師にしかできない役割だと言えます。

――患者さんのライフスタイルによって薬を変えるのはなぜですか?

たとえば、1日に2回飲む薬と1回でいい薬があるとします。普通に考えれば1回で済ませたいと思いますよね。
しかし、HIV治療に使われる薬には一つ一つに細かな条件があります。1日1回、ただし夕食後の服用。そうなると夕食の時間がまちまちなビジネスマンの方には、合わないかもしれません。
ですから、HIV患者さんのコミュニケーションをよく取って、一緒に治療を進めていくといった姿勢が大切なんです。

――なるほど。HIV領域の薬にはほかにどんな特徴があるのですか?

ウイルスに働きかけるための薬であることです。
HIV治療では、厄介なことに一度薬を飲み忘れると同じ薬が使えなくなるケースがあるんですね。「耐性」と言うのですが、つまりウイルスが薬を学習してカタチを変えてしまうのです。

――そうなると、患者さんが抱えられているご不安は想像を絶しますね。

おっしゃる通りです。
日常の些細なトラブルがあったときでも、飲んだかどうか思い出せず不安になって、お電話をいただくことがありますから。
そういう場合は、受話器越しですけど、とにかく一度落ち着いていただいて、一緒に残数を確認したりします。
ですから私たち薬剤師は、HIV領域に関する深い見識は当然として、患者さんの不安な気持ちを理解してどんなことでも受け止められる広い心を持たなければならないのです。

HIV患者を支えるチーム医療

――HIV領域におけるチーム医療では、薬剤師の役割は大きいということですね。

もちろん、薬剤師だけでHIV患者さんを支えることはできません。医師や看護師、ソーシャルワーカーなど他職種との連携は絶対的に必要です。
病院と薬局といった垣根を越えて連携し、治療に貢献できているという実感はありますね。
特に、外来患者さんの薬に関しては、現状すべてを当薬局が担当しているため、会議などで自分たち薬剤師が持っていく意見も貴重に取り扱ってくれるなど、医師や看護師から頼りにされることが何よりうれしいです。
責任は重いですが、やりがいは大きいですね。

――薬剤師が病院にフィードバックする情報とはどんなことですか?

患者さんによっては、本当は薬を飲んでいないのに、医師には飲んでいると言ってしまう方がいたり、若い患者さんだと、受診日に来なかったりすることもあるので、そういった現状をしっかりフィードバックして患者さんの状態をみんなが見逃さないように努めています。

――HIV患者さんの支援では、在宅訪問も行っているのですか?

現在は行っていませんが、今後の患者数の増加や、患者さんの高齢化によっては在宅訪問の必要性など、さらなる支援体制の強化が求められます。
また、長期的な服薬からくる副作用など、新たな問題が出てくる可能性も否定できません。
当薬局では『患者さんのために何ができるのかを常に考え、できる限り対応したい』という想いで支援を続けていきたいと思います。

外苑企画商事だから目指せる薬剤師としての選択肢!

――HIV支援チームには若手の薬剤師も参加していると伺いました。

はい。若手だからこそ、知識の吸収が速くて感受性もとても豊かです。患者さんのために薬剤師ができることを柔軟に考え、意欲的に実践してくれています。
私自身、とても良い刺激を受けていますね。

――最後に、これから薬剤師として活躍される学生の皆さんにメッセージをお願いします!

HIV支援に関しては、学生の方がすぐに挑戦できることではありませんが、調剤薬局の薬剤師として、窓口のワンシーンだけでなく、患者さんの生活背景から一連のすべてを支援する、チーム医療の最前線で活躍できるやりがい溢れる仕事です。
皆さんもいずれ、新しい分野に挑戦する機会が訪れるでしょう。どの道を選んでも、患者さんのためにできることを追求すれば、必ず薬剤師として大きく成長できると思います。